夏の午後でした。
草陰でキリギリスが 声を張り上げて歌っていました。
そこへアリがフウフウいいながら通りかかりました。
見れば 体よりも大きなパンの欠片を運んでいます。
『おいアリ君こけェきて一緒にあすばンけ? おンの歌ァ聞かしてやるじゃん』
キリギ リスがアリを呼び止めて言いました。
『ほんな暇はねェよ。今のうちに食べ物を集めておかンと後ンなってよわるからね』
アリは そう言うとさっさと行ってしまいました。
『ふん、呆れた奴だ、この暑いに汗水たらして働くなんちゅうわ』
キリギリスは馬鹿にしたように笑い、また高らかに歌い始めました。
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