甲州の地口 は行
■地口集
あ / か / さ / た / な / は / ま・や
は行
昼間の提灯 |
役に立たない |
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昔は暗い夜道を歩くのに持って歩いた提灯に昼間明かりを灯すのは意味のないこと
何をするにも役に立たない者や物の道理を弁えない者への嘲笑 |
(例) |
『あいつは昼間の提灯だから頼りにならんぞ』
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ブリキの袴 |
融通が効かない |
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ブリキは錫をメッキした薄い鉄板だが薄いと行っても鉄だから伸縮性が乏しく思うように形を作れない
これで袴を作っても履くに履けない |
(例) |
『あの人は堅物だからブリキの袴だ』
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便所の火事 |
やけくそ |
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ここでいう便所とは排出物が見える所謂ボットン便所のこと
一度火事が起こると溜まっていた排出物もカチカチになってしまう【焼け糞】
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(例) |
『いくら教えても不器用だか雨降り日の太鼓だ』
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便所の月見 |
運の尽き |
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用をたす者にとって絶対孤立の場所である便所であるから じっくりとものを考えるには絶好の場
この便所から眺める月【ウン(コ)の月】 |
(例) |
『これでいよいよ便所の月見か』
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便所の百ワット |
能もないこと |
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百ワットは電灯の光度のこと かなり明るい電灯で日常はせいぜい六十ワット
これをそれほど明るくしなくてもよい便所にしていたのを捉えた地口
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(例)
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『そんなことするのは便所の百ワットだ』 |
坊さんの頭 |
言いようがない・言ったことがない |
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昔は髪結という商売があって男はチョンマゲ 女は年齢に応じて桃割れ 島田 丸まげなどそれぞれ髪を結ってもらっていた
ところが坊さんの頭には毛が無いから髪を結うにも【結いようがない】 |
(例)
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『私は正直者だからウソと坊さんの頭です』
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蛍の尻 |
お先真っ暗 |
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夏の夜の風物詩であった蛍 尻には光を放っているが 頭部の方は暗闇に向かって飛んでいるので【お先真っ暗】 |
(例)
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【これじゃこの先どうなることか全く蛍の尻だ】
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法華の太鼓 |
だんだんよくなる だんだん調子が良くなる |
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法華とは日蓮宗のことで熱心に団扇太鼓を打ちながら「南無妙法蓮華経」と題目を唱える題目講で初めのうちは声も太鼓も静かだが佳境に入り無心になると大きな声や音になる このことを捉えた地口
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盆前の仏さん |
落ち着きのない状態 |
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「来る来ると待ってる盆はただ三日 腐れ彼岸は六日いちにち」
盆は三日しかないのに 春と秋の彼岸はそれぞれ六日と一日(つまり七日)あるのはどうしてかという俚諺
※腐れ=九三ある・・・九月と三月にある
盆は祖霊神を迎える行事で先祖たちは一刻も早く生まれ在所に帰り 多くの人達の歓迎を受けよう盆が近づくとそわそわと心の落ち着きがなくなる |
(例) |
【あの人はどうも盆前の仏さんでだめだ】
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馬糞の川流れ |
バラバラ 物事がまとまらない状態 |
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馬の飼料は藁とか草といった繊維質のものだから糞も粘着性が少ないため 水に触れるとたちまちバラバラになってしまう
川のほとりで草を食べていた馬が川に糞をひり落とすと立ちどころにバラバラになった |
(例) |
【この会議はてんでに言いたいことばかり言っていて馬糞の川流れだ】
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身延山と金毘羅さん |
返さない気 |
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日蓮宗総本山は山梨・身延山久遠寺 金毘羅さんは四国讃岐の神社
ある時甲斐(山梨)の人が讃岐まで金を借りに行ったが断れた その理由は「甲斐」と「讃岐」でゴロが悪かったから【甲斐讃岐 かいさぬき】 |
(例)
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『あの人に金を貸しても身延山と金毘羅さんだから止めた方がいい』 |
馬の子宮 |
大至急 |
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馬の大きな図体から想像するに子宮も大きいだろう【大子宮】 |
(例) |
『急ぎの仕事だから馬の子宮でお願いします』
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産みたての卵 |
いい気味だ・気味がいい |
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新鮮第一の卵 産みたての卵は割ると黄身が艶々していて【いい黄身だ・黄身がいい】 |
(例) |
『あいつ最近調子づいてたから産みたての卵だ』
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お猿の小便 |
気にかける |
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野生の猿には理性がない その猿が木から木に渡る時に小便を放出する様子を捉えた地口【木にする】 |
(例) |
『まあそれほどの事はお猿の小便だな なんとかなるさ』
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お寺の引っ越し |
量がいかない |
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寺の移転は本堂や庫裏だけでなく墓地も移さなけらばならない
檀家の苦情や反対もあってなかなか思うようにいかない【墓がいかない】
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おぼこさんの小便 |
詳しい |
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おぼこさんとは甲州弁で蚕のこと
うず高く積まれた桑の葉を食べながら蚕が小便をする
桑にシーを漏らす【桑シー】 |
(例) |
『あいつは家電のことはおぼこさんの小便だ』
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お宮の鈴 |
ガラガラ(の状態) |
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お宮の拝殿の前の賽銭箱と大きな鈴 この鈴の音ガラガラを捉えた地口 |
(例) |
『せっかくの演奏会なのにお宮の鈴で残念』
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